2006年夏

2006年夏

                       栂池自然園―――夏                       

                       カテゴリー : アーカイブス パート 3                       

          「山と渓谷社の解説文」より:          

 白馬連峰に抱かれた栂池自然園の夏は、6月のミズバショウから始まる。一面の雪の原っぱだった処にポッカリと雪が消えて、丸い穴が空き、ミズバショウが芽を出す。毎年、最初に ミズバショウが咲き、その場所は決まっている。雪解けとともに花が咲くエリア(範囲)が段々広がっていく。次にリュウキンカの黄色い花が目立つようになり、白いミツガシワも群落形成 して行く。コイワカガミ、チングルマ、ハクサンコザクラ、ワタスゲ、ニッコウキスゲなど競って可憐な花を咲かせる。此処、自然園内には木道整備であって、沢山の一般観光客が大勢訪れ てくる所でもある。 

                       栂池自然園 マップ                       


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                       「OUTLINE」                       

 栂池自然園入口を入ると、すぐに湿原が広がる。ミズバショウ湿原と名づけられている通り、初夏に可憐なミズバショウが群生する湿原。次に、一度、木道が途切れ、雑木林の中を歩く、 道路の左側に風穴と言われる岩穴があって、穴の前に立ち止まると、冷やーっとしたエアーが流れ出ている。視界が段々と開けて、湿原を出る、そして、そこは、ワタスゲ湿原になったいる。楠 川の清澄な流れを渡り、少しぬかるんだ道を20分も歩くと、池塘や池のある浮島湿原に出る。この自然園最大の湿原で、季節を追って様々な花を見ることができる。ここは、道が幾つかに分 かれているが、湿原周辺コースに入って、展望台のある小丘に登ってゆく。短い距離なのだが、結構ハードである。標高2020mのピークに立つ。木の間越しに栂池高原や大雪渓方向、雁股池など を見ることができる。ピークから反対方向に下ると、この自然園最奥の展望湿原が広がる、大雪渓を眼前に見る。 

                       栂池自然園の高山植物(7月末頃)                       

                       ミズバショウ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 サトイモ科ミズバショウ属の多年草。湿地に自生し発芽直後の葉間中央~仏炎包と言う苞が開く。これが花に見えるが、仏炎苞は葉の変形したもの。仏炎苞の中央にある円柱状の部分が 小さな花が多数集まった花序である。開花時期は低地では4~5月、高地では融雪後5~7月にかけて、葉は花が終わった後に出て来る。根出状態に出て立ち上がり、長さ80cm 幅30cm 達する。 イトバショウの葉に似ている所から名前を付けた。次に、分布として:シベリア東部、サハリン、千島列島、カムチャッカ半島、と日本では、中部地方以北の日本海側・北海道に分布するが、 南限の兵庫県養父市の加保坂峠にも隔離分布している。山地帯~亜高山帯の湿原や林床下の湿地に存在。<繁殖様式 >1つの肉質の花序には、数十~数百の小花があり、それら全て雌蕊と雄蕊を 持つ両性花。仏炎苞が開いた時点で、多くの小花は雌蕊が露出しており受粉可能である。雄蕊は花序表面には現われていない。開花の後、数日すると花序の表面を押し上げるようにして、雄蕊が 出現し、多くの花粉を放出する、この際、自家受粉をすることがある。その後雄蕊からの花粉放出が続く。このように、最初は雌蕊だけが機能し、やがて雄蕊機能を始めるという開花システム を「雌性先熟」と呼び、イネ科の風媒花によく見られる。その後=受粉後は、花序は大きく成長し、緑色の肉質の果穂(かすい)になる。種子が熟した果穂は、ぼろぼろ崩れていく、果肉をつけ たまま、種子が散布される。果肉は軽くスポンジ状、種子は水に流されるのを助ける。種子自体軽く水に浮く。定着すると、3年程で開花するまで成長する。 

                       ワタスゲ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 カヤツリグサ科ワタスゲ属の多年草。北半球の高山や寒地に分布。日本では、中部地方以北~北海道の高山帯~亜高山体の高層湿原に分布し、大群生を作ることが多い。岐阜県でレッド リストの旬絶滅危惧指定。第2に、特徴として、花期は5~6月、白い綿毛を付ける果期は6~8月であって、花終了してしまうと、直径2~3cmの白綿毛を着ける。この綿毛は、種子の結合体である。  

                       エンレイソウ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 ユリ科エンレイソウ属の多年草。(別名 タチアオイ)太く短根茎から、高さ20~50cmの茎が一本伸び、花茎先端に3枚葉を輪生する。葉は葉柄無し。茎から直接生じる。形は、丸み感 じの菱形様で、直径は10~20cm。花期は、4~6月で、3枚の葉の中心から短花柄が伸び、小さな花をつける。花は花弁無し。3枚の緑色 or 濃紫色を呈する。25年前には、熊本の京丈山(きょう のじょうやま 1473m)にて、この花が白色だったのを思い出した次第です。エンレイソウ萼片があり、横向きに咲く。次に、分布と環境は、北海道、本州、四国、九州と広く分布している。そ れは、傾斜地や山林のやゝ湿った場所。他に、サハリン、南千島にも生える。真黒に熟した果実は食用にする。また、古くから薬草に用いられていた。即ち、サポニンなどを含有。 

                       シナノコザクラ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 サクラソウ属の多年草。花は長花柱花と短花柱花と2種類の型がある。花直径は2cm。また、イウザクラは変種である。石灰岩地に多い。中部地方南部~関東地方西方に分布している。 葉は円形で直径3~7cm、葉縁は不規則・浅裂・鋸歯状をしている。葉表面は無毛で高さ5~10cmの花茎の先に1~5個の花を散形に着ける。花冠は赤紫色、直径2.5~3.0cm。花喉部は黄色で ある。シナオコザクラは旬絶滅危惧種である。 

                       ゴゼンタチバナ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 ミズキ科のミズキ属ゴゼンタチバナ亜属の多年草。<特徴>:高さ5~15cm。葉は2枚対生葉と液性の短枝に2個ずつ葉が付き、合計6枚の輪生様に見える。花の咲く株は葉が6枚迄成長 したものである。花期は6~8月。花は4枚の白総苞に囲まれハナミズキやヤマボウシに似た核果が直径5~6mmの赤果実有り。この花の名前の由来は、白山の「御前峰」より。分布は、 北海道、本州、四国に分布し、亜高山帯~高山帯の針葉樹林下、林縁に生育する。四国には、石鎚山系・赤石山系に分布していて南限にもなっている。海外では、北東アジア、北米に 分布している。 

                       シラネアオイ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 キンポウゲ科( or シラネアオイ科にも分科)シラネアオイ属の多年草の1種、深山植物で、日本固有種の1属1種である。本州中北部~北海道全土と日本海側にかけての山地帯と亜高山帯 のやゝ湿り気のある所に分布している。草丈は20~30cm。花期は5~7月。花弁無し。7cmほどの淡い紫色の大きな萼片が4枚有る。大変美しい高山植物の姿をしている。日光白根山に多く、この 花が、タチアオイに似ていることからシラネアオイ(白根山葵)と名付けられた。or、山芙蓉とも。分類・系統的に見ると、本種は1属1種のシラネアオイ科として、キンポウゲ科から分離する こともあり(ダールグレン体系など)過ってキンポウゲ科に含められていた。しかし、分子系統解析に依れば、北米に分布するヒドラスチス属(これも1属1種)とともに、キンポウゲ科から 初期分岐したと考えられ、系統学的にはキンポゲウゲ科に含めるのが適切なのである。萼片が白いものが、シロバナシラネアオイ、果実が1個の袋果になるものが、ヒトツミシラネアオイと言う。 八重咲きのものが、エゾアオイと区別する。 

                       キヌガサソウ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 ユリ科ツクバネソウ属の多年草。APG植物分類体系ではメランチウム科分類・キヌガサソウ属分類にされる。特徴:大きな葉を車輪状に広げた草で、一面に群生していることが多い。名前は、 傘の状態の様に広がる葉を、貴婦人が用いた衣笠に喩えたとも、別名「花笠草」(ハナカサソウ)。古くから研究されており、1884年に白山で採取されたものが東大に最古の標本として残っている。 2010年10月7日にイングランドのキュー王立植物園は、日本固有種の「キヌガサソウ」がこれまでに記録された範囲では細胞1つ当りのゲノムサイズが最大の種子であると研究報告した。次いで、 分布・生育の環境では、本州中部以北の日本海側の山地帯~亜高山帯の湿った林内や林縁に自生する日本固有種。山の斜面の雪が溜まる下部に多く、雪解け直後の登山道脇で見かけることができる。 火打山、白馬岳、蝶ヶ岳、白山周辺の登山道などで見られる。この花全体の特徴としては、高さは30~80cmくらいになる。葉は輪生し、茎に6~11枚付き、形は長楕円形で、葉縁は全縁付きだ。花期は 6~8月前半で、花片は6~11枚で純白の直径6~7cmくらいの花を一株に一つ付ける。花片は徐々に緑色を帯びてくる様になる。 

                       ヒオウギアヤメ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 アヤメ科アヤメ属の多年草。深山の湿原に自生。高さ70cm程に成育。本州では高山の湿地に自生し、花期は7~8月。葉はアヤメより幅広。北海道東部のキリタップ湿原や近くのアヤメが原では、 少し早く6~7月に開花する。葉の出方が、檜扇(檜の薄板重ねた扇で、昔は、宮中などで用いられていた)に、似ていることに由来する。 ※文仁親王妃紀子さまのお印である。 

                       イワイチョウ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 ミツガシワ科の多年草。別名 ミズイチョウ(水銀杏)――イワイチョウ属を形成する(1属1種類)。花茎の高さ20~40cm。葉根生。厚い腎臓形の葉柄があり、葉縁は鋸歯状になる。秋には黄色 に色付く。花期は6~8月で、花茎の先端は5裂する白色の花を数個咲かせる。分布・生育は、南千島、北海道に、やはり本州では、中部以北~東北地方全地域に分布し、多雪地の亜高山帯~高山体にかけ ての湿原に自生する。このはなも群生することが多い。学名の由来は特別だから:属名の Nephrophyllidiumは、ギリシャ語の nephron (腎臓)と phylion (葉)から来ており、イワイチョウの腎臓形 の葉を表わしている。また種小名の crista-gallil は、ラテン語二イワトリのとさかの意味であり、反り返る花弁形をとさかに見立てて名付けられた。日本名は、葉の形がイチョウの葉に似ていることに 由来する。 

                       シナノキンバイ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 キンポウゲ科キンバイソウ属の多年草。中部以北~北海道の高山帯に生える高山植物。雪渓が溶けた後の湿った草原に生え、高さ20~70cm。花は直径3~4cmのあざやかな黄色で萼片が5~7個ついて おり、花弁のように見える。花期7~8月。葉は3出複葉、小葉はさらに深裂し、鋸歯縁の下部の葉は長さ3~13cm。この花は、直径3cm、花弁様に見えるが、これも萼片であって、5~7個付き、黄色、縁や 裏面に緑色を帯びた部分があることも多い。花弁は長さ6~9mm、雄蕊より小さく橙色。雄蕊多数あり。花柱は宿存性、果時に長さ2.5~4.0mm。集合果は袋果が多数集合し、ほゞ球状の形を成している。 草丈種々であって、15~80cmほど伸びている。 

                       シロウマリンドウ                       


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                       「 OUTLINE 」                       

 リンドウ科シロウマリンドウ属に分類される越年草の1種で、日本固有種である希少な高山植物。別名もあって、タカネリンドウと呼び、最初に飛騨山脈の白馬岳で発見されたことに由来する。 茎は直立して、高さは5~30cmで、茎には細い翼状の4稜があり無毛。亜高山体では茎高さが40cmとなるものもある。単位一か1~2の枝を分岐。根生葉は花期にも残り、長さ0.5~2cmの倒卵形~へら形 で対生擦る。数対の茎葉があり、長さ2~7cm。茎や枝の先端に白い花を付ける。花期は8~9月。茎の先端に長さ5~15cmの花柄を出しす。花冠は長さ2.5~4cm 筒状鐘状形で先端が4裂して平開きする。 花冠の裂片基部は青紫色を帯びて、縁が糸状に細裂。花筒内面の基部近くに、小乳頭状の腺体がある。花筒の長さは萼の長さの1.5倍、萼の長さは、1.5~2.5cmの釣鐘状ロート形で先端が7裂になって いる。朔果は熟すと2裂して多数の種子を出す。種子には刺状の細かな突起がある。次に、分布・生育はどんな状態かというと、飛騨山脈白馬山系(清水岳、白馬岳など)に分布する。1902年夏に矢部 吉禎(植物学者)が白馬岳の山頂部の高山帯でシロウマリンドウを発見し、新しい変種の Gentiana de tonsa ver. a/biflora として発表した。その後 矢部に対する献名が種小名に与えられた新種の 学名(Gentia nopsis yabei )となった。1957年に正宗厰敬により白山で採集されて、シロウマリンドウと同定された標本があるが、これは、ムラサキリンドウの可能性が高いとされている。亜高山帯 ~~高山帯にかけての草地、砂礫地、土砂がやせ崩落した斜面に生育する。それで、岩の多い適当に湿潤な場所に、この植物は、生育するのだ。 

                       濃霧が晴れかけて、大雪渓付近が                       


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                       白馬村の解説文より                       

 大雪渓――全長 3.5km・標高差 600m の白馬大雪渓は、日本一のスケールを誇る。夏でも雪渓の上は、まるで天然の冷蔵庫のように冷・涼しく暑さを忘れて心地よい涼風が吹きわたって来る。 猿倉~大雪渓迄の白馬大雪渓遊歩道は、キヌガサソウ・サンカヨウ・シラネアオイ・ニリンソウなどの花々や緑豊かなブナやトチの木、雪解け氷(みず)の流れる澄んだ沢の水、眼前にそびえたつ 白馬岳や小蓮華山へと続く稜線が目を楽しませてくれる夏のトレッキングルートである。猿倉から徒歩で約1時間30分で大雪渓に至る。 

                       栂池高原駅から出発前より                       


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                       栂池パノラマウエイ                       

                       上り   「栂池 ゴンドラリフト⇒ <イブ>」                         

             栂池高原駅――→自然園駅方面     乗車時間     約 20 分             

                       下り   「栂池 ロープウェイ」                       

             自然園駅 ――→栂池高原駅方面    乗車時間     約 5 分             

          「高山植物」: 解説     ウィキペディア調査     より。